message テーマ2 想像力をふくらませる 創十三 なごみの庭 | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
私たちデザイナーは、あるときは相手に説明し説得するために、あるときは評論家然として自分の設計を自己肯定するために、さまざまな言葉を駆使します。相手が自分とまったく同じ考え方をし、同じ水準の技術力をもっているなら、本来は図面に表現されたものだけで充分通じるはずなのですが、そんなことはあり得ません。ですから、クライアントに対して、上司に対して、あれこれと解説する言葉はどんなときにも重要なのです。 そのときに、最も効果的なのはどういう言葉でしょうか。まずは、特徴を強調することです。そしてその特徴は何かに喩えられたら理解が得やすいのです。普遍的なイメージ。「モネの庭のように」と言えば、少し関心のある人ならすぐにイメージできますよね。伝えたいイメージが食い違うことはあまりありません。 デザイナーでない人も、自分の庭をつくるときに、いろんな本を見たり、専門家の話を聞いたりして、頭の中には、たくさんの言葉が蓄積されています。ナチュラルな、スタイリッシュな、というような形容詞。何々風とか、何々スタイル、あるいは直接的に何々のようなという比喩。ね、あなたも自分の庭を人に説明するとき、ついついこんな言葉をつけているでしょう。とても絞り込んだ言葉として。 では、何かに喩えることができないような、あるいはいわゆる「特徴」などがない庭はどう説明すればいいのでしょう。誰にでもわかりやすい限定された特徴がないことが、その庭の特徴だというときはどう説明すればいいのでしょう。そもそもそんな説明がなぜ必要なのでしょう。 洋風、和風という、何も伝わっていない割に、適当にごまかすことにかけてはとても便利な言葉がありますが、あなたの庭は和風か洋風かと聞かれて、完璧な自信をもって答えられる人は、どれほどいるでしょう。さて、前置きが長くなりました。 バリバリの何々風の庭や、形容詞をつけて解説できる庭が、格好いい庭だと思っていませんか。もちろん思っていませんよね。 いろいろ勉強して、試してみて、例えば昔ながらの庭木をぽつぽつ植えた庭をイングリッシュ風に変え、次に雑木を植えてナチュラルテイストを加味し、でもバラだけは好きだから残しておいて……、芝を抜いてつくった花壇はウッドデッキに変えて周囲には宿根草を植えて……、というように好みの変化(あるいは悩み)につれて、最も大切なものが絞り込まれていきます。で、最後に行き着くところには何があるのでしょう。 なごみ 先日ある庭でのこと。和でもなく洋でもなく、いわゆるデザインされた形跡がなく、何か特別なものがあるわけでもなく、なんだかよくわからない、なんの変哲もない、正直言ってちょっとごてごてした狭い庭でのこと。その庭の主人は、「これといって自慢するもののない雑然とした庭ですが、私にとっては最高のなごみの庭です」とおっしゃられました。 その人にとっての「なごみ」。その人が到達した「自分だけの庭」のスタイル。解説は必要ないし、自慢するものでもないし、人の目を気にするものでもない。あるのはその人の心にフィットしているということだけ。和だとか洋だとかに分けられないし分ける意味もないし、ましてブームなんて関係なし。素材感がどうしたって? 色のコーディネート? 小難しい話はお断りだよ! つまり、その人にとってはかけがえのないものだけを集めた庭……。大切なことは全体ではなくひとつひとつのもの。それらを手にとるようにいつくしんで、なごむ……。それも気ままな庭の形だと改めて痛感しました。 なんてあたり前すぎるメッセージでしょう。でも、一時のガーデニングブームの揺り戻しが来つつある今、このあたり前のことが実は最も「今風」なのかもしれませんね。 少なくとも、私には「私にとってのなごみの庭」という言葉はとても新鮮に聞こえました。 そういえば、大きな漬物入れに植えられた立派なツツジの株が道端に出されていたり、さまざまな入れ物に、ネギやパンジーや金のなる木などが、それこそこってり植えられた路地を、なんとなく懐かしい気分で思い出します。もしかすると、私たちは「演出」するということに少しこだわりすぎていたかもしれません。 このメッセージは この本に掲載されています。
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