message  テーマ2 想像力をふくらませる    創八 庭を眺める方向
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


 ことに新興の住宅地では、オープン外構のお宅が増えてきました。門や塀がなく街路に開かれた庭は、街並みを明るくし、すがすがしい開放感をつくります。道往く人に我が庭を見てもらおう、街並みに彩りを、という気持ちが現われていていいですね。一方、塀や門で囲っている庭の場合は、自分の家の中から庭を眺めることが第一義です。ここでは、庭をどこから眺めるかについて考えます。



オープン外構の長短所

 オープン外構のメリットについて、改めて述べるまでもないと思いますが、家が華やかに見える、街並みが明るくなる、人に見てもらうことで手入れに張り合いがある、人に誉めてもらって仲間ができる、住んでいる人も外交的で明るい人という印象になる、見通しがいいので防犯効果がある、といったことでしょうか。逆にデメリットは、いつもきれいにしておく必要がある、つまり手を抜けない、プライバシーが守りにくい、旧来の格式が感じられない、といったことでしょうか。

 メリットを活かしながら、プライバシー上のデメリットを中和する方法として、門のまわりはオープンにして主庭の周囲は生垣で囲うといった考え方もあります。またオープンといっても、門こそないが建築的なデザインで囲われた雰囲気に、という方法もあります。

 ただ、残念なことがあります。建て売り住宅のおしきせの外構ではなく、せっかく花いっぱいのアプローチに憧れてオープンな外構にしたのに、いつのまにか囲ってしまった家をよく見かけます。いつのまにか門をつくったお宅、低い植栽を潰してブロック塀に変えたお宅。理由はどうあれ、夢が潰れてしまった寂しさを感じてしまいます。それにしても、そんなに高い塀を建てなくてもいいのに。今までのセンスの良さで選べばいいのに。なんだか、打って変わって徹底的にクローズドにしているようで、その人の気持ちの変化が気の毒にさえ思います。



まずは実感すること

 そこで、これから新しい家に住み替えて、オープン外構にしようかなと考えている人に提案です。オープン外構に憧れていたとしても、やっていけるかどうかは別問題ですから、住み始めてしばらくはアプローチまわりにはまったく手をつけずに、つまり門なし、塀なし、階段は仮設で、インターホンや表札、郵便受けも木杭か何かにくくりつけて生活してみるのです。不便ですがひと月やふた月ほどならどうということはないでしょう。そして、門や塀のないすがすがしさを感じてもっと気持ち良くしたいと思うか、逆に門も塀もない頼りなさに耐えられないか、実感として確かめてみるのはどうでしょう。アプローチまわりは家庭の顔であり、最も気を使うところです。つくり直せば、費用もかかり大変です。しかし、現実につくり直した例が意外なほどありますので、憧れと現実は違うものだということをわかってほしいと思います。本来ならアプローチのイメージは家を選ぶとき、設計するときに前もって考えておくことが望ましいのですが、オープン外構の場合は、自信がある人以外は慎重に、ということです。



リビングから眺める庭

 庭をどこから眺めるかという点で、もうひとつ重要なことがあります。住んでいる人が生活のさまざまな場面で、自分の愛庭を眺めることができるかどうかです。もちろん、道往く人に見せることを喜びとしたいという考えにも賛成しますが、最も楽しみたいのは住んでいる人自身ですよね。リビングから、つまり家人が最も多くの時間を過ごす部屋からの眺めを最重視したいと思います。当然じゃないか、と思われるでしょう。ところが、現実はそうなっていないことも多いのです。

 例えば、アプローチは花いっぱいですばらしいのですが、リビングの前はあのアルミ屋根のカーポートになっていたり、大きなスチール物置がでんと置いてあったり、洗濯物が干してあるというお宅がありますよね。いわば庭の眺めの最も重要なスペースを、車や物置や洗濯物が占領しているわけです。こうなれば限られた敷地ではとり返しがつきません。


 建物を設計するときに、家の中の間取り優先で、庭のとり方やアプローチのとり方などは後でなんとでもなると考えていたことが、こういう事態を起こしてしまったのではないでしょうか。これは設計者の能力の問題だけでなく、営業マンの誠意の問題でもなく、住む人自身の意識の問題なのです。それぞれの個人にとってのベストの解は違う、ということを再認識してください。設計の過程で、あるいは建売住宅を検討する過程で、庭での生活や楽しみといった視点で、建物をよく睨んでみてください。



デッキはどうか?

 最近ではアウトドアリビングなどと言って、リビングから直接デッキに出ることができるお宅をよく見かけますね。しかし奥行きの浅い庭の場合はどうでしょう。リビングから見えるのはデッキだけで、せっかく丹精を込めた庭の花壇や木やいろいろなディスプレイが、家の中からよく見えないということになっていないでしょうか。いつも目にしていたいものが庭に出ないと見えないようでは、とても残念なことですね。やはりリビングの正面には、最もいつも眺めていたいものを配置するべきです。

 なぜ、リビングの掃き出し窓の正面から、デッキをちょっとずらすというような発想がないのでしょうか。さらに、デッキをずらすとともに建物の位置から少し斜めに設置すれば、花を植えることのできる小さな三角形の隙間をつくることもできます。でも、デッキはリビングの正面全体につくるものだという暗黙の常識に縛られていると、そんな簡単なことがなかなかできないのですね。

 リビングから眺める、和室から眺める、風呂場から眺める、洗面室から眺める、キッチンから眺める、トイレから眺める、寝室から眺める、街路から眺める。それぞれどんな庭の景色にしたいですか。



このメッセージは
この本に掲載されています。

書名 自分流に愉しむ「気まま」な庭づくり
著者 清水光次
定価 本体価格 1500円  A5版192ページ
初版 2002.8.1 現在第2版販売中
目次 目次は下記を参照してください(立ち読みはこちらから)
発行 株式会社 メタ・ブレーン
http://www.web-japan.to
紹介 メタ・ブレーンでの紹介ページ
http://www.web-japan.to/book/review_niwa.htm
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