message  テーマ2 想像力をふくらませる    創三 ミニビオトープは心で楽しむ
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


「ビオトープ」って何?

 ビオトープとは、ドイツから発信された概念で、その土地と環境に本来存在していた自然の生態系を回復しようとするものです。平たく言えば、身近な動植物が自然な形で棲息していける環境をつくろうというものです。ここ数年、少しずつ話題になっています。公園や、工場敷地の中の一角や小学校の校庭、大規模な分譲マンションの庭に採用されたりもしています。



ビオトープのつくり方

 一般的には、水辺があって水草が生い茂り、周囲は湿地帯になり、その外側には草原やまばらな林というように、環境が連続して変化していくようにつくります。そして、できるだけ多様で多くの生物が棲息していけるような環境をつくります。例えば昆虫の棲息場となるように、石や木で多くの隙間をつくります。もちろん池の底をコンクリートで平滑に仕上げるなどということはしません。水辺のビオトープには、目立つ生き物として魚はもちろん、例えばヤゴ、ミズスマシ、カエルなどが棲むでしょう。あたりにはカマキリをはじめ多くの昆虫、少し大規模な環境ならネズミやヘビなども棲むでしょうし、鳥もやって来るでしょう。そしてそれらの大型生物を支える無数の生物が生きていくことになるのです。


 ビオトープに水辺をつくるのは、生物層の多様性が大きくなるからですし、見た目にも楽しいからですが、水辺がなくてもビオトープはつくれます。山の中をイメージしてください。例えば林の中で大きな倒木が腐っているようなところ、落ち葉が堆積した上にごろごろ石が積み重なって苔むして、その隙間から木や草が生えているようなところ。いかにもたくさんの生き物たちが棲息していそうです。こういったところを人工的につくるわけです。



個人住宅には向かない

 とんでもなく広い庭がある場合は別にして、個人住宅の庭に本格的なビオトープをつくるのは無理があります。デメリットが克服できないからです。多くの生物を、とくに虫をたくさん発生させるわけですから、当然蚊などの害虫とも仲良くしないといけません。植栽も園芸植物中心で構成するわけではありませんから、見栄えはよくありません。そしてメンテナンスも必要です。自然な形で生き物の生育環境をつくるといっても、自然に任せていれば、強い者が弱い者を駆逐してしまいます。種の多様性を維持するための世話が必要です。



ミニビオトープ池

 個人住宅の庭でできる、ビオトープの精神をちょっとだけ実現するミニビオトープ池についてお話ししましょう。ミニビオトープ池では、鯉などの大きな魚が自分で生きていける環境をつくることはあきらめます。鯉のような大型生物までも含めたバランスのとれた生態系をつくることは難しいからです。放っておいてもなんとか棲息するのは、せいぜいメダカ程度の大きさの魚でしょう。タニシやミズスマシやカブトエビやオタマジャクシなど、お好みで何を入れても構いません。その他の生き物はわざわざ入れる必要はありません。自然発生するからです。最も来てほしい昆虫であるトンボは自分の意志でやって来ます。



池の造り

 池の底には土を入れます。できれば田んぼの土。近所の休耕田などで頂戴しますが、田んぼの土は薬分や油分を含んでいる場合があるので注意が必要です。田んぼの土が手に入らないなら造園屋さんに頼みます。なければ砂でも構いません。土を入れるのは水生植物を植えたいからですし、水質浄化を期待してのことです。植木鉢を沈めてもいいのですが、まあビオトープとしてのプライドの問題ですね。植物はスイレンでもヒシでもジュズダマでもショウブでもホテイアオイでも、何でも構いません。本来のビオトープでは野草ばかりを植えますが、庭のミニビオトープ池なら少しは見栄えも大切なので、園芸品種を中心にして少し水辺の草を植えるということになるでしょう。ビオトープ池の場合は、必ずしもろ過槽を設ける必要はないかもしれません。池の中の土に棲むバクテリアの力に期待してのことです。

 もうひとつ肝心なのは岸辺の造りです。池の構造本体とは別に、化粧として石や木や土でできるだけ複雑な形に仕上げます。こんなところに生物がたくさん棲みつくだろうという記憶と想像力を働かせましょう。池の水がひたひたとしている土の部分があれば、雰囲気がでますね。お手本として近くの山の池にでも視察に行きましょう。

 周囲には鳥の来る、実のつく木を植えましょう。落ち葉も掃かずに自然の移り変わりの風情を楽しむようにします。



ビオトープに向かない人

 でもビオトープに挑戦してはいけない人もいます。ちょっとでも虫を見つけるとすぐにドバーッと殺虫剤をかけたくなる人。殺したい虫だけでなく、無差別にあらゆる生物を殺してしまいたい人なわけですから。池のまわりで殺虫剤を使うと、池のメダカもバクテリアも死にます。池に薬剤が入ると手がつけられません。ビオトープなのですから、葉っぱを食い荒らすいろいろな幼虫もカナブンも歓迎ですし、糞を落とす鳥も来てほしい、落ち葉をがさごそいわせてトカゲも歩きまわってほしいわけです。

 自然に興味のない人もだめです。ハイキングをしても、道端の草花に「ああ、いいな」と思えない人や、園芸品種以外の植物をすべて雑草として目の仇にするような人もだめです。ビオトープは、自然風庭園というよりも一歩も二歩も進んで、小さな自然を庭に実現しようとするわけですから。

 ノウハウ本を信じて疑わない人もだめ。ノウハウ本はほとんどが「庭園」の思想で書かれています。木の剪定はこうしろ、薬散はこの時期に何回、落ち葉はきれいに掃け、何年おきに植え替えて、肥料はこれくらいを年何回、と。それはそれで正しいことが書かれているのですが、ビオトープには通用しません。ビオトープはディスプレイとしての植物を育てるのとは視点が違うのです。ビオトープ管理の一般的ノウハウなどというものはありません。

 言えることは、人間が見るためだけの庭ではなく、また花だけをきれいに観賞できたらいいという庭でもなく、ビオトープは生き物たちに棲んでもらえる環境を、人間が一生懸命につくるものだということです。主役は人間ではなくて、トカゲやミズスマシなのです。そして大げさな言い方をすれば、この庭では人間もお仲間として「一緒に居る」ということなのです。

 どうでしょう。うーん、やはりダメですか。見栄えの悪さはなんとか我慢できたとしても、虫は大量に発生するし、何しろつくるのが面倒。そうですね。よほどの覚悟と思い入れがないと、面倒な割には報われないでしょうね。やはり、市販されているミニビオトープキット(そういう呼び名で売られているパック商品がある!)のように睡蓮鉢に土を入れて、メダカを飼う程度でしょうか。でも、敷地が三〇〇坪や五〇〇坪もあって庭に余裕があるならやってみたい庭づくりだと思いませんか。これこそ息長く続ける我流な庭づくりのひとつの最先端だと思います。

 ビオトープは目で見る庭ではなく、心で楽しむ庭と言えるでしょう。昨今のナチュラル志向に呼応して、関心が高まるビオトープ。自然環境の破壊者でしかない我々人間にできることのひとつとして、ビオトープをご紹介しました。



このメッセージは
この本に掲載されています。

書名 自分流に愉しむ「気まま」な庭づくり
著者 清水光次
定価 本体価格 1500円  A5版192ページ
初版 2002.8.1 現在第2版販売中
目次 目次は下記を参照してください(立ち読みはこちらから)
発行 株式会社 メタ・ブレーン
http://www.web-japan.to
紹介 メタ・ブレーンでの紹介ページ
http://www.web-japan.to/book/review_niwa.htm
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