3message テーマ1 常識を疑う 常四 ビジュアル指向のいきすぎ | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
最近のビジュアル表現技術の発達には目を見張ります。写真、印刷、映像など。人間の知覚のうちで最も情報量が多いのは視覚だと言われていますが、それにしても偏りすぎではないでしょうか。仕事のうえでも、プレゼンテーションは絵がないと見てももらえないという状態です。このことは、人の話に耳を傾けず、文字を読まずに、目から入るイメージや情報だけで理解したような気になる、つまり楽なことだけを選んでいると言えないでしょうか。 気持ち良さは五感で でも、庭の楽しみには、目だけではなく五感(死語かな)をフルに働かせたいものですよね。 庭づくりをするとき、目に見えるものだけから判断していませんか。庭で楽しく過ごすときに、植えられた花や飾りつけたものを見るだけで満足していませんか。もちろん、人の手によってつくられた庭ですから、見て楽しむ部分が多くてあたり前です。でも、すがすがしさ、さわやかさ、懐かしさ、開放感、温かさ、安心感、驚き、うれしさ、といった感覚(感情と言ってもいいかな)は目で見えるものだけから得ているわけではないですよね。 いくら視覚的にきれいな庭でも、蒸し暑かったり、道路の騒音がうるさかったり、隣の工場の臭いなどが漂っていたら、気持ちの良い庭にはなり得ないのは言わずもがなのことですよね。それらは写真には写りませんよ。目で見えること以外にも、庭の良さを感じる要素はたくさんあるわけです。庭を楽しむために、もっと感じたいのです。 自然の中ではいい気分 山に登ったり大きな河原や公園を散策していると、自分の庭とは違う「いい気分」になりますね。きれいな花が一面に咲いているわけでもないのに。理屈っぽいことを言うようですが、単にその空間が視覚的に開放的なだけでなく、その空間の中に自分の身を置いて溶け込んでいる、その一部になっているように感じるから良い気分になるのだと思います。大自然の写真を見ても、自分がそこに行ったことがなければさほど感動はしませんが、ささやかな自然であってもその場に自分を置いてみるとうれしくなるものです。 自分の庭の場合はどうでしょうか。庭は観賞する対象? そうだとすれば、きれいに見えるように人がしつらえたものですよね。自然そのものではないのです。ですから、ビジュアル的には美しくても、意識的に感じようとしないと、本物の自然のようには気持ち良くはなれないのです。 庭で何を感じる? 庭にもさわやかな風は吹いているし、ハチやアブの眠たくなるような羽音もしています。草のこすれる音も聞こえているし、コガネムシが葉っぱの上を歩きまわるかさこそという音も聞こえるでしょう。にわか雨が降った後には草の匂いや土の匂いが立ち昇っています。木漏れ陽は温かくても、土に触ってみると思いのほか冷たかったりします。小さな庭でも、目で見えることだけでなく、ほかにも感じることはたくさんあります。そういったことも全部感じながら、「ああ、気持ちが良いな」と思うのです。 目を閉じて 「まあね、だからそれがどうしたって?」という声が聞こえてきそうですが、もっともっと感じて庭を楽しみたいと、くどくど書いているわけです。 庭に出て、目をつむってみましょう。できれば土の上に寝転んでみましょう。仰向けでも、うつ伏せでも、目をつむって。そしてじっとして。きっと今までとは違う世界が広がりますよ。いろんなことを感じますよ。ぜひ試してみてください(そうすると我が家では犬が顔を舐めにきます)。近所の人に救急車を呼ばれないときを見計らって。 このメッセージは この本に掲載されています。
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