message 「庭のイメージ」編  … 花は野にあるように
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


 なんと、本屋のガーデニングコーナーに行くと、新和風スタイルなどのタイトルをつけた本が並んでいます。いよいよブームの変わり目が近付いているようですね。

 このメルマガを始めた頃は、まだまだイングリッシュガーデンが大流行りで、ちょっとでも批判的なことを書こう(批判するつもりではなくて、ブームなんだということをお伝えしたかっただけなんですが)ものならブーイングが来そうでしたが、ブームはブーム、終わるものなのです。

 以前、次はカントリ調だとか、イタリアガーデンだとか、書きました。それにしても、和風とはね。誰が仕掛けているのでしょうかねえ。


 さて、今回は少し趣向を変えて、他人様の書いたものを引用します。変に要約したりするより、価値があると思いますから。

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 千宗室氏が「裏千家 茶道のおしえ」という日本放送出版協会から出されている本に書かれている内容です。私達の庭づくりに直接役立つということはありませんが、イメージの醸成にはいいんじゃないでしょうか。


利休七則の三
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花は野にあるように


 「花は野にあるように」この言葉の中に、茶の美が理想とするものの全てが言いつくされていると思います。

 茶花というものは流儀花ではありません。天・地・人などという構成上の規則もなく、宗教的な約束事や制限もありません。鶏頭や沈丁花などが茶花としては嫌われますが、これは色調が華美過ぎるとか、香りが強すぎて茶席にはあわないということから避けられているだけです。

 茶花の美しさの基準は、あくまで茶道の精神であります。すなわち「野にあるように」の言葉に帰するものであり、また「詫び・さび」という茶道独特の美の観念から計られるものであります。
 茶道の古い歴史をさかのぼっても、珠光がとなえだした、いわゆる草庵の茶の湯以来、花は一枝か二枝を、なるべく華美でない地味な花入れにさしたようで、それは今日でも変わらない姿です。 『南方緑』をみても、「口広花入に菊一輪」「籠花入、一重の白桃」「細口に菊一輪」「竹筒にかきつばた」と、いかにも、小さくささやかであります。

 利休居士が最も好んで使った花は椿でした。椿は花首が落ちやすく連想が悪いなどと言われていますが、茶花では、あの楚々とした清らかな美しさが特に好まれています。そして、舟形花入などには、花のつるが自然に垂れる姿を好んでいけたりもいたします。

 さて、ここで一歩進んで、それでは自然のままということで、文字どおり野山に咲き乱れる花の眺めをそのまま花入に再現するのがよいかというと、決してそうではありません。むしろ、一輪の花、一枝の茎に、野に咲く花の美しさと全生命を盛り込むことに真の意味があるのです。

 天生年間(1573から1591年)も末のある夏のことでした。利休居士が丹精こめて素晴らしい朝顔の花を咲かせたことを伝え聞いた秀吉は、朝顔の花を見るための茶事を利休居士に命じました。命を受けた居士は庭の朝顔をひとつも残さず切りとり、茶室の床に一輪だけいけて秀吉を招きました。

 美しく咲き乱れる朝顔を主題に、どのようなもてなしがあるのかと出かけた秀吉は、路地にもつくばいにも花を見かけず、狭いにじり口から薄暗い茶室に身を入れてはじめて、床の間の掛け花入にただ一輪、ぼうっとほの白く浮き出した、しっとりと露を含んだ朝顔の花に出会いました。

 朝顔の花の美しさを、暗くて狭い茶室のほの白い一輪に集約させたのです。利休居士の心にくいばかりの趣向、現代風にいえば演出によって、美しい花の命のいちばんの盛りを、今、この瞬間に味わってくださいという居士の願いが、無言のうちに秀吉に伝えられたのであります。

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 いかがですか。その花の美しさを知り尽くして、見せる、味わう心意気が伝わってきませんか。丹精こめて育てた花を、演出のためとはいえ、切り取ってしまう勇気は私にはありませんが、気持は分かりますよね。


 和風の庭園はこんな楽しみ方が本流だと思います。
 目で見て楽しむというより、「心で楽しむ」ということではないでしょうか。

 だから、洋風庭園のように、色やパターンや形の美しさに重点があるのに対して、和風の庭園は、詫び寂が理解できないと楽しめないのでしょう。

 とはいえ、和風庭園を楽しむために難しい理解が必要だとは思いません。少しの知識(日本人として育てられたのなら、身に付けている??)と、楽しむための心と時間のゆとり、そして楽しみたいという心があればいいのです。


 本当は、西洋庭園もその地の人達の心を震えさせるなにかがあるはずです。歴史や育てられ方や、風土や自然環境によって培われたものの感じ方、ここでは狭く言えば庭園感とでも言いましょうか、があるはずだからです。

 私達日本人には分からないものなのでしょう。ですから私達は、外国で素晴らしい西洋庭園を見ても、きれいだとか、可愛いだとか、おしゃれだとか、目で見た印象だけの表現しかできないのではないでしょうか。


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 先日、京都駅で開催されていた、<デ・キリコ展>に行きました。全国を回っているのでご覧になられた方もおられるでしょう。有名なイタリア広場のシリーズが少なかったのが残念でしたが、そこに掲示されていた説明文をご紹介しましょう。


「哲学的世界のうちに発見された古代のモチーフが、今は記憶の永遠性を再構築するためにプレハブ形式で使われているのだ」


 どうです?
 少しこ難しい表現ですが、言っている意味は分かりますよね。

 でも、この表現をされた方が本当に言いたかったことの中身は分かりますか?

 「哲学的世界」、「古代のモチーフ」、「記憶の永遠性」。

 こういう言葉は、文字としての意味は分かるのです。でも、西洋世界の人達がこの言葉から受け取る意味と、日本人として育った人が受け取る意味は違うと思うのです。

 イタリア広場を描いた絵画ですから、庭として強引に捉え直してみましょう。
 例えば、庭の哲学的世界、庭の古代のモチーフ、庭の記憶の永遠性。



 さて、あなたの庭は?





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