実践編 ウィリアムモリスの庭 | ||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||
めっきり涼しくなり、盆栽の鉢もあまり乾かなくなってきた。小さな盆栽のツタも色づき始めた。これ、正真正銘の甲子園球場のツタ。一塁側外野席の入口の近くの木から種を採ったもの。たくさん芽が出たが三本だけ持っている。これって不思議だね。同じときに同じ木から採り、同じように育てているのに、紅葉の時期が違う。ひとつはまだ緑色、ひとつは紅葉が始まったばかり、ひとつは完全に色づいている。樹形や葉の大きさといった「形」が微妙に違うだけでなく、生理的な性質も違う。おもしろいよね。やはり生き物なんだ。当たり前。 ○ ウィリアム モリスというイギリスの詩人、小説家、工芸家、社会活動家をご存知かな。植物や鳥などをモチーフにしたデザインは一度は目にしたことがあるんじゃないだろうか。 実はこの人、自然に溢れた庭をたくさん造っている。人のためじゃなく自分の庭だが。「デザインされた自然への愛 ウィリアム モリスの庭」という本を読んだ。とても面白かったので、今回はそれを紹介しよう。 モリスの庭園デザインの原則とモリスの言葉 1 家と庭を統一する ロンドンの郊外の造園家は、非常にしばしば、造園術様式の醜い大きな庭を愚かにも模倣して、わずかな砂利道の部分と草地をくねらせる。それから次に変な強情さでもって、手に入れられるだけのもっとも形式的な植物を、その場所いっぱいに植え込む。ところがほんの少しの常識を使えば、狭い地面でも、最も単純な方法で設計することができ、・・・ 2 樹木、生垣あるいは自然に見える垣根で庭を囲む 大きくても小さくても庭は秩序正しくなおかつ豊かでなければならないのです。(中略)かならず、「自然」のわがままか荒々しさのどちらかを模倣するべきなのです。 3 地域の独自性を保つ 自然の木々の森を取り払い、代わりにヒマラヤスギや風変わりなコニファーのような不快な雑木を植える当局の意図を、私は非常に憂慮している。 4 素朴な花を植える スノードロップがどこにでも咲いていて、近づく春のすばらしい発想を与えてくれるのです。(中略)すすけていないきれいな土の中から約束されたものが芽生えてくるのは、なんて美しく見えるのでしょう。 花を咲かせる場所を、自由におもしろく生長する植物で満たすのです。そしてあなた方が願う複雑さを出すことは「自然」に任せるのです。(中略)自然は決してそうすることに失敗したりはしないでしょう。 八重咲きの花には用心深くあってください。かわいい花の房がまぎれもなく目立つような、昔ながらのオダマキを選んでください。ぐじゃぐじゃになってしまうような、八重咲きのものではありませんよ。(中略)一重のスノードロップがかもしだす、美の不思議さをかすめとられないように。八重咲きの花には、得するものは何もなく、損失ばかりが大きいのです。 5 流行を避ける 珍しいだけの植物、「自然」が、美ではなく、グロテスクを意図して作った植物、(中略)人が住んでいない家からくるような非常に変った植物は、侵入者であり、敵であると覚えておいてください。 6 現存する木を残して調和させる 舗道のように全く裸になってしまうまできれいにしてから、建築を始めるべきではない。 7 庭を生産的にする 8 レクリエーションとリラックスの場所を含める さて、各々説明はしないが、モリスがどんな庭づくりが望ましいかと考えていたのか、項目をよく読むだけでなんとなくわかるよね。 非常にいい本なので、読んでみてください。少々高価ですが。 「ウィリアム モリスの庭」 著者 ジル・ハミルトン ペニー・ハート ジョン・シモンズ 訳者 鶴田 静 発行所 東洋書林 |
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