message テーマ1 常識を疑う 常二 内と外をつなぐ | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
すでに一戸建てに住んでいる人にとっては、もはやいかんともしがたいことですが、これから家を設計しようとする人にはぜひとも考えてほしいことがあります。 「内と外をつなぐ」ということ。この言葉はよく見かけますが、全然つながっていないのに言葉の響きの良さだけで使われ、実際は開口部があるだけということが多いですね。騙されないようにしましょう。どうつなげばガーデンライフをより充実できるのか、ひいては暮らしそのものを充実させられるのか、ということについて考えてみます。 内と外の接点 リビングと庭の接点部はどんなしつらえになっているでしょうか。掃き出しの窓にせいぜいウッドデッキを付けて、というところではないでしょうか。実際に開放できる幅もガラス戸一枚。そんなことで楽しいガーデンライフが実現できるでしょうか。 昔の日本家屋では深い庇に広い縁があって、まわり込むと土間があって、土間の奥には台所や納屋があって、そのまま突き抜けると裏の庭に出るというように、内と外の境界に中間的な領域といえるスペースがあって、「内と外」はやわらかく必然的な意味をもってつながっていたのです。今ではどうでしょう。内と外はガラス戸一枚で接するようになりましたが、より良い関係でつながっていると言えるのでしょうか。 オープンリビング リビングの前に庭があるなら、建具をとり払って完全にオープンにできるようにしたいものです。両サイドに完全に引き込めるようなものであればうれしいですね。折れ戸でも構いません。敷居も、あのアルミサッシの埃の溜まる複雑な形状のものではなく、素足で踏めるフラットなものにしたいものです。そして、床と同じ高さの敷居。そうすれば「リビングの延長としてのウッドデッキ」と言ってもいいものになります。しかし、リビングの延長というのであれば、そこで外用のスリッパに履き替えるようでは、気合いの入り方が足りませんね。 ダイニングとつなぐ 庭での食事は一年に何回くらい? デッキをつくった最初の頃だけってことはないでしょうね。確かに、日常的に庭で食事、というのは難しいものです。なぜか。キッチンやダイニングと庭との関係がスムースでないからです。少しでも面倒だと、なかなか庭での食事なんてできないものですよね。ですから庭で食事を楽しみたいと考えているなら、キッチンやダイニングと庭を一体的に計画しないといけません。 キッチンからそのまま、つまりお鍋を両手で持ったまま、庭に出られること。そして庭にもダイニングテーブルや椅子を、常にきちんとしつらえて、もちろん照明もばっちり。今日は庭で昼食だからといって、やおらテーブルやチェアを物入れから出してきて、なんてことはやってられませんよね。庭にもキッチンを造るつもりで、流しや調理台くらいは用意しておくのがベストです。 風呂とつなぐ そこそこの広さの一戸建てに住んでいるのに、風呂から庭が眺められないなんて。できれば庭を眺めるだけでなく、一歩進んで、例えば風呂デッキに出られるようになっているといいですよね。更衣室からではないですよ。浴室から直接です。風呂上がりにそのまま(つまり裸んぼで)庭に出られたらどれだけ気持ちがいいでしょう。夜風に吹かれながらビールを一杯。体が冷めてきたら湯につかり直して、なんて夢ですか。 これは何かを犠牲にすれば案外簡単に実現できます。風呂デッキは小さな面積でいいし、清潔な床とチェアと照明さえあればいいのですから。そしてキッチンとつながる小窓が付いていて、そこから娘さんがビールのお代わりを出してくれたりしたらいいですよね。「家は疲れを癒す場所」と考えて風呂を家の中心にすると割り切れば、庭と風呂をつなぐレイアウトも不自然ではありません。 寝室とつなぐ 外で寝る。大胆にもこんな発想があってもいいですね。南の国ではままあることかもしれません。見たことがあります。それも集合住宅! そのマンションではベッドが半戸外、つまり屋根と部分的な衝立状の壁だけがある、開けっぴろげな部屋(スペース)に置いてあります。そして蚊帳を吊って寝るのです。 しかし、これはさすがに日本では無理ですから、せめて寝室と庭が連続的な空間になっていて、気持ちのいい夏の夜には、サブベッドを庭に出して蚊帳を吊って寝るということでしょうか。キャンプするのだと思えばすばらしく快適でしょうね。 住宅はシェルターか 現在の家づくりは、居住空間を戸外から切り離して完全防備しています。「住宅はシェルターだ」などといって、あらゆる外部の環境から人と家財を守り、均質な空間をつくろうとしています。 ハウスメーカーも工務店も設計者も国も、そして何より住み手がそういう家を求めてきたわけです。断熱性や遮音性に優れ、完全防水、防虫で、地震や台風にも強く、省エネルギーで生活できるという家をです。 それは気ままに変化する外部環境からコントロールのきく室内環境をいかに遮断するかということだったわけですから、いまさら外部と一体になった云々ということ自体が難しいわけです。端的に言うと、そのことに適した標準的な建築部材はないし、業者もクレームが怖くてやりたがらない。つまり、住まい手の本気の意志が、もっと必要なのです。 このメッセージは この本に掲載されています。
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