message テーマ3 深く突きつめて考える 考五 庭を広く見せる | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
60〜70坪の広さの宅地では、主庭は奥行きがおおむね4〜5メートル、幅は10メートル前後でしょう。この庭をどうすれば広く見せることができるか。まず家の中からの景を考えてみましょう。 重ね合わせの景 奥行きの浅い庭をどう深く見せるか。結論から言えば、重ね合わせの景をつくることです。 見る位置から順に、最前列に灌木があって、その背後に低いラティスがあって、その奥にすらっとした幹の木があって、次に睡蓮鉢があって、その奥に花壇があって、石があって、最奥が生垣、というように重ね合わせていくのです。このようにレイヤーを重ね合わせていくことによって、視線を奥へ奥へと誘導するのです。 フィルターを通して庭のメイン(この場合は睡蓮鉢と花壇)を見ることで奥行きを感じさせるのです。 重ね合わせていくものは何でもいいのですが、それぞれが見る価値のあるものを、センス良く重ね合わせます。 例えば、中景に睡蓮鉢を置くとします。この睡蓮鉢全体をそのまま見せるよりは、手前の灌木やラティスで適当に隠すことが大切です。その方が、奥行き感が出ますね。 お気に入りのオブジェを、どれもがよく見えるように並列にして置いてあるのを見かけますが、「展示」してはだめです。もっとよく見たいと思わず覗き込ませるような配置が望ましいわけです。 面的なもの、つまりラティスや灌木の列植などは左右から少しずつレイヤーを差し込んでくるとでも言いましょうか、両端を見せずに左右の奥行き感を出すように配置します。そして、その面的なレイヤーの間に点景を入れていきます。点景とは、睡蓮鉢、オブジェ、手水鉢、シンボル的な灌木、景石、草などですね。 高木の配置 高木を庭の縁に沿って、一列に並べて植えている庭をよく見かけます。 よくある勘違いは、高木を家から離れた一番奥に配置した方が、庭が広く見えるという思い込みです(充分広い庭はそれでいいんですよ)。 主木をどこに植えるかはとても大事なことです。最も眺めるに良いところで、その木の幹越しに庭が見えるところがベストな位置です。それは多分リビングの前ですね。窓の中央ではなく少し左右にずらした位置です。幹を眺めて楽しむ木、さらさらと葉が透けて見えるような木がいいですね。うっそうと茂っている木や、常緑樹は背景として最も後ろに配置しましょう。 そして、後ろに行くに従って葉の小さいもの、葉の色の濃いものを配置するとさらに奥行き感が出ます。 庭を仕切るということ 次に、長手方向を眺める場合です。庭に出て眺めるときの方向です。この場合も、奥行きを見せるのに重ね合わせ手法が有効です。 庭をいくつかのエリアに分割すると、自然にレイヤーを重ねることになります。ただエリアを分割するといっても、平面的にここは花壇、ここは菜園、ここは池ということではなく、立面的に分割すると効果が大きいのです。つまり見る方向にいろいろなものが重なりあっているから、視線を奥へと誘導できる。庭の全貌が一瞥して見えてしまうと効果が小さいのです。向こうには何があるのだろうと期待させる、進んで行ってまだ先がある、いろんなシーンが次々と現われるというのがいいのです。丁寧につくり込んでいるな、という印象にもなります。例えば、庭の真ん中にパーゴラがあれば、どちらから見ても、もう一方のエリアはそのパーゴラ越しに見ることになり、奥行き感が出てくるということです。高木の幹越し、アーチ越し、ラティス越しでも同様です。 「仕切る」といっても完全に視線を遮ってしまうのではありません。人が移動するのに無理がない程度に仕切る。閉塞感があってはいけません。迷路のように不自然に折れ曲がりながらというのは考えられません。ごちゃごちゃして狭苦しい、暑苦しい感じになってしまっては逆効果です。 狭い庭に奥行き感を出すために、重ね合わせを考えて奥行き感を出そうということをお話ししました。 厳密に言えば、立って見るのか座って見るのか、照明はどうするか、日の光はどちらからさしてきてどのように物を照らすのか、庭に動きのあるものを入れようか、などもあわせて考えたいところです。そういったことは、じっくり眺めて感じをつかむしか方法はありません。すべてを計算ずくでできれば作庭のプロです。私たちは、やりすぎてとんでもないことにならないようにだけ気をつけて庭づくりを楽しみましょう。 このメッセージは この本に掲載されています。
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