message テーマ2 想像力をふくらませる 創十一 日本庭園と西洋庭園の違い | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
伝統的な庭園について、日本と西洋ではどう違うのかをお話ししましょう。ありがちなテーマですが、頭の整理ということで読んでください。日本における庭園の始まりのひとつは京都の禅宗寺院の庭園です。有名な庭園に竜安寺の石庭があります。これと、幾何学パターンの伝統的な西洋庭園の違いについて、基本的なことがらを整理します。 石と植物 日本の伝統的な庭園素材の代表格は石です。何百年経っても変わらず、庭の拠り所としての存在感を維持し続ける石です。禅宗寺院では人が己を見つめるために庭を向いて座禅を組むそうです。そのときの庭は、不動の「心」をもった石の庭です。日本人は大きな石に神秘性があるという感情を抱いていますよね。まるで石に精神が宿っているかのように。石が伝統的日本庭園の中心なのです。植物は、石さえあれば庭が成り立つというほどに排除されています。 一方、西洋庭園は植物、とくに花が中心です。石は重要視されていません。あるとしてもせいぜい土留めの石垣程度です。昔、西洋の貴族たちはプラントハンターによって珍しい植物を集めさせました。関心は花に向いていたのです。 日本では庭を観賞するときに、作庭者の意図をくみとり、さらに、無心になって庭全体や石の心を読もうとします。つまり日本の庭は、無心になって己を見つめるためにあり、西洋の庭は花の色を楽しむためにあったと言えるかもしれません。 日本は植生が西洋と比べものにならないほどに豊富で、建物も木でつくる。だから庭はその対比として石でつくり植物を排する。西洋は豊富な石材で建物をつくり、庭は珍しい植物であふれかえるようにつくる。シンプルに言い切ってしまえばそういうことです。 日本の平安時代頃の建物は、蔀戸を押し上げるとバーッと庭が目に入り、というより空間が庭と一体となります。そして床の間を背にして座った姿勢で、庭を眺めることになります。これに対して、西洋は石の建物なので開口部(窓)は大きくなく、テラスやブリッジに出て眺めます。つまり日本では人と庭とは同一空間の中での対峙した位置関係であるのに対して、西洋では上から眺め渡すことになります。従って、デザイン的には日本の庭は立面的に書割のように組み合わせますし、西洋の庭は鳥瞰的に見て美しいパターンとしてシンメトリーに完成されたものを好みます。 忘れずにいたい日本の庭 さて、現代の日本の庭デザインはどこに向かっているのでしょうか。「日本の心」を忘れるな、などとあいまいなスローガンを口走るつもりは毛頭ありません。住宅形式も変わり、西洋以上に気密性の高い家がもてはやされ、西洋以上に街中に緑がなくなった今、庭も西洋化することは必然でしょう。でも、日本の伝統的な庭園の良さは忘れずにいたいとは思いませんか。 現在のヨーロッパでは日本の庭園の評価はとても高いのに、ご当地では古くさくて陰気なものとして疎ましがられているなんて。例えば竜安寺の石庭は世界の宝物です。外国からの見学者はじっと長い間座って何かを感じようとしているのに、日本人の観光客は立ったまま写真を一枚撮ってお仕舞いなんて悲しいではないですか。 このメッセージは この本に掲載されています。
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