3message テーマ1 常識を疑う 常七 イメージのミックス | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
「庭は、あまり欲張らずに単一のイメージでつくった方がうまくいく」と言われます。 雑誌で見たロンドン郊外の花いっぱいの庭、カリフォルニアの荒れた海に面した別荘の乾燥した庭、スペインのけだるいような太陽光がさし込むパティオのある庭、八ヶ岳山麓の丸太でつくった別荘の庭、どれもこれも憧れますね。 老舗旅館の気品のある坪庭も捨てがたいし、裏山の明るい林の中にある陽だまりの雰囲気もいいなあ、なんて思いますね。 せっかく楽しむための庭をつくろうというのに、いいなあと思うものをひとつに絞る必要があるのでしょうか。 さすがに庭が数坪しかないという場合は、欲張りはできませんが……。 和洋混合の庭 話を単純にするために、ちょっと強引に、今流行のメルヘンの庭とともに和風の庭もあわせてつくりたいというケースを考えてみます。 ひと続きの庭を、リビングの前はメルヘンチックに、和室の前は雰囲気を和に変えて、というのは自然な発想です。このようなときは家の中と同じように、うまく折り合いをつける必要があります。インテリアなら、壁や天井のクロスを連続させて空間の違いを目立たなくしたり、逆にパチンと空間を切り分けつつ和を強調せずに全体をモダンなデザインに見せたり、あるいは全体をコラージュさせて洋でもなく和でもないエキゾチックな空間に見せたりしますが、庭でも同じような考え方ができると思います。 「なじませる」工夫 とはいえ、ひと続きの小さな庭では、まったく違うスタイルのエリアを見通せるようにするのは、違和感が強すぎて危険な感じがしますから、なじませるという前提で考えましょう。 単純に言えば、全体のメルヘンな雰囲気を壊さない程度に、和のエリアにそこならではの極小の庭(世界)をつくるのです。つまり、囲わなくてはならないほど違うスタイルを唐突にもち込むのではなく、少しだけ和のイメージがあるものを用意して、「さりげない主張」をさせるわけです。例えば、和室の前だけに少し和の雰囲気のする木を植える、あるいは落ち着いたデザインの睡蓮鉢を置くといったように、全体で見ても違和感のないものを慎重に選びます。「和を象徴するもの」を少し入れて、それを小さな「和の世界の拠り所」とするわけです。まわりに埋没してしまうような小さすぎるものでは意味がありません。 例を挙げるなら、木ならナンテン、ハギ、モミジ、シャラ、コナラなどはどうでしょう。ハナミズキよりもヤマボウシの方が和の雰囲気を出せるでしょう。木ではなく点景で工夫するなら、苔の付いた自然石、ニュートラルなデザインの睡蓮鉢、あるいは加工していない自然石そのままの手水鉢はどうでしょう。こういったものなら、全体のメルヘン調にも違和感はありませんし、「和のもの」という主張をさせることができます。 連続性を壊さず そのうえで、その周辺に少しだけ和の環境をつくります。ここだけに白い砂利を敷くとか、フッキソウやタマリュウなどの和洋どちらでも使える下草を入れたりします。そして、和室の景からアンティークレンガや小人ちゃんの置物など、明らかに「和」とは異質なものを排除します。 ただ、庭を地模様として見たときに、スタイルの違うエリアの境界線を明確に引くのはよくありません。あくまで庭全体の連続性を大切にします。抽象的な言い方ですが、グラデーションをつけるように変化させていくと言えばいいでしょうか。一度でうまくはいかないでしょうから、少しずつデッサンするような気分の改造が必要でしょう。インテリアの場合と同じです。 イメージのコラージュ 少し広めの庭なら、もう一歩進んで、いくつかのイメージやスタイルをコラージュした庭づくりができます。明快なひとつのイメージで貫かれた安心感のある庭づくりではなく、好きなものを貪欲にとり入れていくという庭づくりです。誰もがもっている既存の固定イメージをそのままつくるのではなく、いろいろな興味あるものを組み合わせて新しい自分流のイメージを構築し、自分のセンスを信じてあなた流のスタイルをつくります。難易度は高いと思いますが、挑戦のしがいがある楽しい庭づくりです。 ところで、庭の景は、結局はさまざまなものをアッセンブルしてつくるわけですから、それら無数のアイテムを和洋などという抽象的な押しつけの先入観で縛られずに、自由な感性で選択したいと思いませんか。普段使っている言葉に「和風の庭」「洋風の庭」というのがありますが、何が和風で何が洋風なのでしょう。実は、そういう分類はほとんど意味がないのです。仕立てものの松と石燈籠のある庭と、それ以外の庭というほどの意味でしかないと思います。「和風の庭」はまだしも、「洋風の庭」というだけでは、何も説明したことにはなりませんよね。 このメッセージは この本に掲載されています。
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