message テーマ2 想像力をふくらませる 創五 引き算のデザイン | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
クールガーデン インターネットのサイトで、「クールサイト」という言い方がありますね。そのときの「クール」とは、「すてきな」、「すばらしい」、「理知的なあるいは精神的な喜びを与える」という意味です。そんな庭。「クールガーデン」。造語ですよ。 前の項でスタイリッシュな庭のことをお話ししましたが、クールガーデンには少し違う面があります。つまり、スタイリッシュとは、格好いい、おしゃれな感じですね。シンプルでさっぱりとしていて洗練された庭のことをスタイリッシュな庭と呼びました。そうした意味では、見た目はクールガーデンも同じ雰囲気です。違うのは、より鮮明に「理知的で精神的な喜びを与える」ということ。 デザインの世界でも、いろいろなテイストがあります。ヘタウマなごみ系、こってりゴージャス系、カラフルかわいい系もあるし、モノトーン緊迫系などさまざまです。かわいらしい、おしゃれなと言ってもいろいろあるし、カッコイイと言ってもそれぞれ何を格好いいと感じるかは違うわけです。あたり前の話、人によって違うのです。 見せるために とはいえ、とりあえず格好良く見せるにはどうすればいいのか。ひとつの方法として、「引き算のデザイン」をすればいいのです。あれもこれも必要だからといって盛り込んだ要素を選別します。本当に必要なものだけに絞り込みます。設計図にしてみると、たったこれだけ? といった感じで、不安になるくらいにです。 その選別操作のなかに、その人の思う格好良さが表われてくるのです。デザインセンス、大切にしている生活スタイル、本来的なその人にとっての庭の意味、空間の価値などがおのずと出てくるのです(自信のない人はなんでもかんでも入れたがる、自信のない商品にはいろいろ余計なおまけ機能がついている、アピール力のない建売住宅には性能に不釣り合いな高価な内装が使われている、おっと口が滑りましたね)。 引いて残ったもの ここで、問題です。強引に引いて、捨てて、最後に残ったものが何か。さて、あなたの庭では、それは何ですか。 空を映す睡蓮鉢。風を感じるコナラの木。収穫を楽しむブドウの木。水音を楽しむ噴泉。心を癒す花壇。光や雨や季節によって姿を変える景石。くつろぎの席を設けるパーゴラ。娘の入学祝いの桜の木……。 人に見せることを意識した格好良さでは選びませんでしたよね。引き算をして最後まで残る大切なものには、何をするためにとか、何を楽しむためにとか、自分にとってかけがえのないものだからとか、そんな理由があるものです。 また、必ずしも、大切なものは、「もの」ではないかもしれません。空を映す睡蓮鉢といっても、大事なのは睡蓮鉢ではなく、そこに映る「空」なのかもしれません。風を感じるコナラの木も、コナラではなく、葉をゆらす「風」が大切なのかもしれません。空や風を表現し身近なものに感じるための仕掛けとして、睡蓮鉢やコナラが選ばれたのかもしれません。砂利敷きの庭にぽつんと睡蓮鉢が置かれていて、「この睡蓮鉢に空が映るんですよ」と言われたら、この人はこうして自然を感じて楽しんでいるんだな、とわかるわけです。そういった「心」がわかる庭が、クールガーデン。 引き算のデザイン。デザインをするときに意識する、ひとつのアプローチの方法です。空間のデザインは、「もの」のデザインではありません。「大切に思うこと」を表現する「セット」のデザインなのです。ですから、デザインする人は専門のデザイナーである必要はないのです。「何を大切に思うか」を考えるのは、デザイナーではなく、住む人自身だからです。デザイナーは、それを表現し、気づかせてくれる人なのです。 このメッセージは この本に掲載されています。
|
|
|||||||||||||||||||||||
メッセージインデックス 自分流に愉しむ気ままな庭づくり ホーム 庭づくりメッセージ&講座 気ままなミニ盆栽 気ままな庭(My Garden) ドロのこころだ(ブログ) 英国風景庭園ミステリー「水霊の巫女」 甘南備山逍遥 書籍紹介:自分流に愉しむ「気まま」な庭づくり プロフィール 清水計画室 |
||||||||||||||||||||||||