3message テーマ1 常識を疑う 常六 フェイクな庭づくり | ||||||||||||||||||||||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | ||||||||||||||||||||||||
「明快な具体的な用途をもつ庭以外は、どんな庭であれ、フェイクだ」という暴論を述べます。フェイクとはつまり「まやかし」。こういう見方もあるよという程度のことで、批判ではありませんから誤解のないように。 例えば英国式風景庭園 貴族が贅を尽くした遊びで、自然を装いながら実のところは完全に人の手でつくったピクチャレスクな風景、英国式庭園は、原自然でないという点でフェイク。自然の風景の良さを模倣し、あるいは凝縮して、それを館に居ながらにして楽しむことから、なにやらインテリジェンスを感じる方もおられるかもしれません。でも実は、そうすることによって本来の自然を破壊し、目ざわりという理由で民家を(場合によっては村ごと)移転させてつくった風景だとしたら……。 ナチュラルガーデン ナチュラルガーデンにしても自然そのものではないのでフェイク。ナチュラルガーデンとは言いつつも、ガーデンである限り人間の側から見た美を追求しているわけで、雑草はお断りだし毛虫もお断り。あくまで住む人の自分勝手な都合で虚構を構築しているわけです。でも、その自分勝手を感じさせないように自然風景らしきものをいかにつくるかが、この庭づくりの腕の見せどころです。 小人と花の庭 そして、いろいろなオブジェ。これが極めつけのフェイク。というかフェイクのための小道具。ナチュラルガーデンとは違って、こちらの庭づくりはいかに虚構を、より「虚構らしくつくるか」ということが楽しさなのですね。例えば、小人ちゃんの置物。お住まいの方が白雪姫だとは誰も思っていませんが、いかに魅力的に童話的な世界をつくり上げるかが楽しいのです。この場合は、この虚構の世界に浸りきることで楽しみは倍増します。 花いっぱいの庭もフェイク。自然状態の原生花園の数倍もの密度で花を植えています。しかも苗から。そして、いかに手をかけていないか(実はお金も手間も相当なものなのに)を見せるわけです。ここにお住まいの人は社交的で明るく毎日を過ごされているのだな、という印象を見る人に与えることが少しでも意図されているのなら、やはりフェイク。 フェイクを楽しむ 庭の、明快で具体的な用途とは、農作物の収穫後の整理や乾燥の作業であったり、子どもと走りまわることであったり、陶芸作品のギャラリーにすることだったり、あるいは禅宗寺院の庭園のように修行のための庭だったりしますが、そういう用途ではなくて、自然の観賞や憩いやくつろぎのための機能ということになると、たちまちフェイクの要素が出てくるのです。たとえ人に見せようという気持ちがなくても、ご自身が「その気になって」眺めたいわけですから。 いかに上手な虚構をつくるのか、つまりいかに見せるか、魅せるか、隠すか、に工夫を凝らすこと。こだわりをさりげなく、しかしあえて表現すること。フェイクはフェイクとして割りきって自慢すること。うーん、楽しそうですね。とてつもなく広い庭では、緑さえあればおおらかに構えていられますから、少々のことをしても悪どさはありませんが、小さな庭では工夫が必要ですね。フェイクを追求すればするほど、小さな庭ならではのわびしさ(ビンボーくささ)を感じてしまうわけですが、それを見せない工夫も庭づくりの楽しさのひとつですね。 このメッセージは この本に掲載されています。
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