message  テーマ3 深く突きつめて考える    考十一 ルーフガーデンとバルコニーガーデン
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


 ルーフガーデン(建築的に言えば屋上緑化)やバルコニーガーデンについてのお話です。小さなプランターを並べる程度ならなんら気にすることなく楽しめばいいのですが、大型のプランターを並べたり、ルーフの上に直接土を入れたりする場合は、慎重に行なう必要があります。荷重の制限、排水の確保、防水層の保護、風対策が主な留意点です。



荷重の制限

 張り出し型(キャンチレバーといいます)のバルコニーはもちろんのこと、ルーフバルコニーにおいても、載せることのできる荷重は思ったほど大きくはありません。積雪地域でなく、土を入れるという前提で設計されていない場合は、建築コストの都合上、極端にいえば人間がうろうろする程度の荷重でしか設計されていないことがほとんどです。一平方メートルあたり数十キロ程度の積載荷重でしょう。そこに巨大なプランターを置いて大きな木を育ててということになれば、あるいは例えば厚さ三〇センチもの土を一面に入れてということになれば積載荷重はすぐに数百キロになってしまいます。それがたっぷり水を含んだ状態ではさらに大きくなります。


 構造上の安全率は見られているでしょうから、そうしたからといって突然に建物が崩壊するということにはならないでしょうが、長い年月の間に建物にひずみなどの悪影響があることは容易に想像できますよね。マンションであれば、管理規約に「どこそこの荷重は何キロまで」と明記してありますが、一戸建ての場合はあまり気にされていないのではないでしょうか。



土の比重

 比重とは単位体積あたりの重量が水の何倍かという数値です。水はもちろん一リットルあたり一キロですね。普通の土は一・三キロくらいです。ということは、三〇センチの厚さで土を敷くと計算上は一平方メートルあたり三九〇キロになるわけです。想像よりずっと重いでしょ。あなどれませんよね。

 ちなみに袋詰で売られている花の土の比重は〇・七〜一・〇キロくらいでしょうか。あれれっ、花の土は水に浮くの? いえ、ここでいう比重は仮比重と言って、土の粒子の間にある空気も目方に入れての勘定です(土の粒子そのものの真比重は一・七〜一・八キロくらいです)。



軽量土

 人工的につくられた軽量土というものがあります。専門業者でないと扱っていませんが、通気性や通水性があって、かつ、水もちや肥料もちが良い屋上緑化の専用土です。比重は商品によって異なりますが、湿潤状態でだいたい〇・三〜〇・五キロくらいでしょうか。荷重が心配なときにはこれを使うことをお勧めします。

 一度、ご自身の家のバルコニーやルーフバルコニーの許容積載荷重を調べてみてください。カーポートの屋根の上でガーデニングをしようとされている方も要注意です。



排水の確保

 ところで、突発的な集中豪雨のときに、二階の部屋に浸水してきたなんて、青天のヘキレキ、大損害ですね。排水口の掃除はこまめにしてください。ゴミが排水管(樋)に流れ込まないようにカバーがついていると思います。葉っぱなどが樋に流れ込むと詰まることがあります。樋が地中の桝に真っ直ぐに降りていればまだしも、通常そうはなっていません。たいていは地中で曲がってから排水桝につながっています。その曲がりのところで詰まることが多いのです。

 少々詰まり気味でも、少量の雨や日常の水やり程度の水は少しずつ流れていくので、詰まっていることに気がつかず、大雨が降ったときに通水能力をオーバーしてしまい、ルーフの上にオーバーフローしてしまうのです。ということで、排水設備は掃除しやすいことが大切です。見苦しいからといって、何かで隠蔽してしまったりしないように。また清掃が面倒だからといって、決して葉っぱや土を流してしまわないように。

 それから、土を直接床の上に入れる場合は、室内の立ち上がり(二階部分の壁)までぴったり土を入れるのではなく、見栄えは無視して、必ず土の部分と建物(二階部分)との間に排水用の溝(ルーフの床のままでいいです)を取ります。そうすれば建物の壁面に降った雨(吹き降りのときは思った以上の雨量ですよ)が排水されますし、万一、土の上に水が溜まったときでも安心していられます。



防水層の保護

 建物の屋根やバルコニーの防水にはいくつかの方法がありますが、いずれも防水層そのものは強いものではありません。スコップをごつんとあてるだけで破れたりします。上を人が歩く場合はモルタルなどで保護してあります。その上にタイル貼りなどの仕上げをしてあるわけです。ルーフやバルコニーの上でガーデニングをしようとするときに、その防水層に注意して施工することが重要です。

 植物の根は強いもので、モルタルの小さなひび割れ(クラックといいます)に侵入し、徐々に隙間を押し広げます。そして防水層に行きつき、突き破ります。ですから、土を床に直接入れるときには、植物の根を遮断する防根シートを施工することが大原則です。

 ちなみに、コンクリートやモルタルのひび割れは起こるべくして起こります。施工後水分が蒸発するに従って収縮してひび割れるのです。ヘヤークラックといって幅のごく小さいものは構造強度的には問題ないのですが、植物の根はそんな小さな隙間にも入り込みます。



パレットでの緑化

 軽量土壌入りのパレットが専門業者から販売されていますから、プランターを単にレイアウトするだけでは物足りないという方はこれを使いましょう。大きさは四五センチ角くらいで、パレットごとそのまま置いていきます。一般的には、軽量土と防根シートと排水層がセットになっており、厚さは一〇センチ程度です。これに芝やタマリュウ、セダムなどを植え込むことができます。このパレットを敷設することで、建物全体のルーフと縁を切った状態で、土を敷き詰めることができるのです。



風対策

 ルーフガーデンに高木を植える場合、充分な土の厚みはありませんし、軽量土壌を使うことがほとんどですので、普通の木杭は使えません。ワイヤー支柱にします。ワイヤーはコンクリートの立ち上がり部に設けた金具などにつなぎます。それができない場合は、高木の植栽はあきらめます。風除けのための囲いも考慮しましょう。土の飛散防止にもなります。



経験のある工事店へ

 ルーフバルコニーやバルコニーでの庭づくりは、生活空間に緑をとり入れるために、もっと採用されていいと思います。とくに、地面には小さい庭しかとれず、カーポートの上に庭をつくりたいという方は多くおられるでしょう。

 でも、なかなか大変なのです。とくに、床(屋上)に直接土を入れることは、経験のある設計者ときちんとした施工会社に頼む場合を除いて、お勧めできません。施工は、植木屋さんに直接依頼するのではなく、できれば屋上緑化の経験のある建築会社を経由して頼む方が安心できます。植木の職人さんが地面以外のところでの工事に慣れていないことが多いからです。防水層に無頓着な施工をされて、万一のことがあれば大変です。

 これから家を建てるのでなく、既存の住宅の場合は、無難な路線でいきましょう。軽量のプランターレイアウトと置き式木製平板の敷設だけで景をつくるか、あるいは床面を緑化したいときには軽量土壌入りのパレットを敷き並べる方法にしましょう。



このメッセージは
この本に掲載されています。

書名 自分流に愉しむ「気まま」な庭づくり
著者 清水光次
定価 本体価格 1500円  A5版192ページ
初版 2002.8.1 現在第2版販売中
目次 目次は下記を参照してください(立ち読みはこちらから)
発行 株式会社 メタ・ブレーン
http://www.web-japan.to
紹介 メタ・ブレーンでの紹介ページ
http://www.web-japan.to/book/review_niwa.htm
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