たとえば、道路と石垣あるいは生垣の間に、奥行き数十センチの植栽スペースがあるとします。少し敷地に余裕のある建売住宅では、なにか植えられていたりしますね。少々デザイン重視の業者なら混植してあるでしょう。奇をてらわない業者ならサツキを列植してあるかもしれません。
敷地際のボーダー状の植栽部分を、あなたならどうデザインしますか。
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人気があるのは、混植。つまり、いろいろなものを植える。
手間要らずでボリュームがあり、季節感もある組み合わせ。サツキ、ツツジ、ユキヤナギ、レンギョウ、ムラサキシキブ、笹、アジサイ、センリョウなどなどの組み合わせ。大きさに変化をつけて、枝垂れるものも効果的に使いたい（形の変化）。常緑のものも入れておきたいですね。もちろん季節感を出せる組み合わせは重要です。
ローズマリーなどのハーブの大株を中心とした葉色を楽しむ組み合わせ、季節の草花がメインの組み合わせ、形と葉色を楽しむコニファーによる組み合わせ、などももちろん人気です。
混植のポイントを整理しましょう。植物の組み合わせ方は自由ですから、「いかにも！」というパターンを選ぶことはありません。でも、美しく見せるコツはあります。
敷地際なら、あまりに多くのものを使わないこと。さっぱりしていた方がおしゃれだと思います。主とするものを数種類とし、それ以上のものを使うなら下草として使います。多すぎると、本人はひとつづつ思い入れがありますからいいですが、道往く人にはぐちゃぐちゃしているように見えます。
一定の規則性を持たせること。完璧な規則性は必要ありませんが、気持ちのいい（つまり違和感のない）リズムがあれば、整理された落ち着きが生まれます。規則性とは、形、大きさ、葉の色のリズムということです。必然的に、樹種の繰り返しということになります。ただし、こまごまとした規則性ではなく、誰が見てもわかるようにおおらかにいきましょう。
形に特徴あるものを効果的に使う。枝垂れるもの、直立するもの、匍匐するもの、庇のようにはね出すものを強調して使うと、豊かな変化をつけることができます。さまざまな種類を植えても単調になるのは、形の変化が考慮されていないからではないですか。
横に並べて整列させるだけでなく、奥行き方向にも混植しましょう。下草的に使ったり、垂らしたり。
混植のバリエーションは無数にあり、デザイン心がくすぐられます。季節感もあり、美しいし、楽しい。でも、奥行きの薄いライン状の植栽スペースでは、その背景が大事です。背景がきちっとした壁や緻密な生垣だとデザインが活きてきます。逆に空間的にすっぽ抜けている家庭菜園が背景だとどうでしょう。いくら上手にリズムを刻んでいてもおもしろくありません。
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では、単植はどうでしょう。
単植の良さは、なんといってもクールさでしょう。潔く、自分の好みを主張します。ボーダーの役割を明確に演じます。
妥協のない樹種選定をしましょう。立ち性のローズマリーオンリーなんて、個人住宅ではなかなか見かけませんね。いいと思うけど。冬に消滅してしまうものでさえなければ、なんでもオーケー。花色だけの変化をつけるというものありますね。ツツジをずらっと並べているけど花が咲くときは色とりどり、というのはよくあるパターン。
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単植だからといって、単調で遊び心がなくて安物くさいということではありません。こだわりがあってきちんと手入れされていると気持ちのいいもの。混植だからといって、ありきたりのパターンで木々の姿形が乱れ、打ち捨てられているように見えると、余計みすぼらしく見えます。
ところで、敷地境界沿いの緑はそのオーナーの心を移します。人に見られることを意識する必要のあるところだからです。大げさな言い方をすれば、うまくいけばこだわりや豊かさが感じられるし、下手をすれば何も感じられないだろうし、失敗の場合は浅薄さや貧しさが透けて見えるということになるでしょう。門は家の顔といいますが、その意味は、多くの人にとって金銭的豊かさの象徴。立派な門は、心や好みやライフスタイルではなく、ステイタス。これに対して緑のデザインや手入れの様子は、オーナーの趣味や人柄を表します。
作り直しを恐れず、妥協せず、ですね。
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