message 「庭のあれこれ」編 … 居場所2 | |||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | |||||
先日(4月29日)、京都伏見の城南宮で行われた「曲水の宴」という行事を見に行ってきました。 そこで気が付いたこと。前々回の号で、「庭での居場所」のお話をしました。庭でのお楽しみの拠点となる居場所を持ちましょうというテーマでした。お気に入りの位置にガーデンチェアを置いて、ということでしたね。 一言、書き忘れました。 * * 庭で座り込むことのすがすがしさは、格別のものがあります。 ずいぶん前に、「庭に寝転ぼう」ということをお勧めしましたが、そこまでしなくても、地べたに座り込むだけでも、庭との一体感というか、溶け込む感覚というか、自分も庭の一部になる感覚というか、いつもと違う感覚になります。 情緒的言い方をすると、立ったままだと「観察者あるいは鑑賞者の目」。イスに座ると、「オーナーとしての満足感を得られ」、地べたに座り込むと「庭あるいは自然との一体感を感じる」というところでしょうか。 ウッドデッキの気持ちがいいのは、はだしになって、そこに座り込むことができるからですね。 先日、友人が自宅のウッドデッキが完成したので見に来いというので、行ってきましたが、焼肉パーティーを催してくれました。完成したウッドデッキに薄い座布団を敷いて座り込み、ビールやワインをたらふくいただき、幸せな気分になりました。直に座り込むと、目線がいつもよりずっと低い位置になり、まわりに植え込まれて丹精された草花が、とても身近に感じられました。 ウッドデッキではなく、地べたに直接座り込むと、例えば芝生の上なら芝生の、土の上なら土の感触を感じます。野原に座り込むと草いきれがぐんと濃くなったように感じます。 一度、地面に座って庭を眺めてみましょう。私は、庭の池の横で、玉竜の上に座り込んで、鯉の動きを眺めます。やった餌を全部食べきるまで。しゃがむのではなく、腰を落ち着け、心も落ち着け、座りこんで。 * * で、曲水の宴(きょくすいのうたげ、めぐりみずのとよのあかり)で、私が見たもの。 それは水辺に座り込んで和歌を詠む風流な平安貴族の姿。 その設えは、小ウチギ姿の女官には半畳ほどのござと硯や筆の入った箱と短冊、酒を飲んだ後の杯に入れる木の小枝。狩衣姿の公卿には、藁で編んだ丸い座布団(あれは何と言うのかね)と、同じ品々。 苔むした庭園の流れの岸に直接置かれた敷物に着座し、歌を詠み、流れてくる酒を頂くのです。 歌人が着座しているときは、それほど意識しませんでしたが、歌人が退場した後のそれらの設えを見ていると、そこに座ってみたい!!!という気分になりました。そこに座って見る庭の景色はどんなだろうと。 (もちろん私は立ったまま、見物していました) * * 「曲水の宴」の由来について、ついでに書いておきます。とても風流な庭での遊びです。 「春暖の陽気は人々の心をはずませるが、一方では、疫病のはやりをもたらすものであって、古代の人々は、野山の川原で水を浴み(あみ)身を清め、無病息災を祈った。春のみそぎは、奈良・平安時代に、大宮人の春の雅遊となって曲水の宴に発展し、平安時代には宮中儀式に取り上げられるとともに、雛飾りと重なって桃の節句(ひな祭り)へと進展した」 (城南宮のパンフレットより抜粋) ちょっと補足。ひな祭りの3月3日は旧暦ではちょうど4月の末から5月の上旬。元はひいな流しといって、人間が川に入ってみそぎをしていたものを代わりに人形を流し、かわらでさまざまに楽しみ、ご馳走を食べたもの。 曲水の宴は、庭に巡らされた遣水(やりみず)に歌の上手が着座し、その日のお題に従って和歌を詠み、一首詠むと、流されてくる杯から酒をいただくというものです。(読めないと、罰として三杯飲むとか)。飲んだ証に、杯に小枝を入れて流します。杯は、羽しょう(うしょう)というオシドリをかたどったヒノキでできた船に乗せて流されます。 当日のお題は「春の野」(チトいい加減)でした。なお、参加者の構成は、公卿五員(歌人)、女官二員(歌人)、朗詠者六員(できた歌を「合唱」します)、童子二員(女官が羽しょうを取ったりするのをお手伝いします)、白拍子一員(和歌を詠む間、舞います)、その他楽人、筝曲などです。 城南宮・曲水の宴、近くの人は行かれてみてはいかがですか。 庭の話というより、行事解説のようになってしまいましたね。 |
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