message 「庭のあれこれ」編 … 立派な施主 | |||||
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集 | |||||
メルマガ購読者の方から面白いメールを頂きました。 土地を購入され、住宅の新築をされようとされている方でした。設計者と工務店を決められ、いよいよプロジェクトのスタートという、とても楽しい時期との事でした。 で、質問は、「いい設計者とかいい工務店は分かるけれども、立派な施主とはどういうものか」ということでした。 プロジェクトをスタートするに当たって、ご自身の心構えを整理しておこうとされているようでした。 そういうお考えを持たれたということだけで、もう十分に「立派な施主」だといえると思いましたが、それではせっかくのご質問へのお答えになっていないと思い、少し考えて返事をさせていただきました。 今回のメッセージは、その時の私の回答を、住宅の「建築の施主」から、「庭づくりの施主」に書き替えて、メッセージとします。 * * まず一流の設計者を選ばれた、ということですが、どのような視点で選ばれましたか? あるいはどのような点で一流だとお考えですか。? デザイン力が優れている? デザインテイストやセンスがあなたのイメージにぴったり? 何でも思うとおりに設計してくれる? あなたにとって重要な「あること」(例えば樹木についての造詣が深いとか、庭と建物を一体のものとして捉え住まいの環境として提案するとか)、そういうなにか、あなたが選ばれた理由がありますよね。 その理由がはっきりしているのなら、一流の施主になる第一歩を踏み出しているといえますよ。 つまり、あなたが、庭づくりにおいて、大切だと考えていることが明確になっているということだからですね。 さて、一流の施主たるものの条件、(ちょっとたいそうな表現ですが)を列挙してみましょう。 * * 最も大事なことは、自分の生活において、庭に求めるものがはっきりしている、ということです。 住まい方のスタイルですね。住まいは建物だけでできているわけではありません。住まいづくりは、いわば環境づくり。住まいとは、生活の「入れ物」ではありません。生活する「環境」です。建物そのものではなく、建物によって、あるいは庭も含めた外部空間によって作られる環境なのです。 屋根や壁そのものが大事なのではなく、作られる空間が大事なのです。ですから庭を住まいの一部分と捉えるとき、建物と別々に考えることはできません。どんな生活をしたいのかということを、明快に設計者に伝えないとだめなわけです。 プランニングするということは、空間取り(建物内なら間取りということ)を計画することではなく、施主の生活空間のデザインをするわけです。 さて、計画の初期時点では、夢を語れる人は多いのですが、その語ったことが持続しないというか、ふらつくというか、夢であって現実味がないというか、という人が多いのです。 悩むこともあるでしょう。考えが変わることもあるでしょう。でも、一番大事なこと、つまりどんな生活をしたいのか、これは変わってはいけないわけです。ですから、設計を頼む前に、そこのところはじっくり考える必要があるわけです。 住まいを作るのは大変な仕事です。いろいろあります。いつも喜びばかりではありません。うまくいかなかったときに、地に足着いた考えを持っていないと、こんなはずじゃなかったのに、という常套句が出てきてしまうのですね。 * * つぎに、設計者を信じることです。任せるべきことは任せることです。つまり、その人の能力を十分に発揮してもらうことです。 設計者は図面屋ではありませんよね。あなたの考えを汲み取り、組み立て、発想し、そして形に表す人です。 施主の中には、なんでも自分の考えたことだけがすべてという人がいます。そういう人は損をしているのですね。 設計者の能力をまったく信用していないか、使い方を知らない人なわけです。あなたが選ばれた設計者はどういう点で優れていますか? それを見極めて、能力を発揮させるのが、立派な施主ですね。 * * 三つ目の点。 素直に喜べること。 変な言い方ですが、住まいづくりには苦労はつき物ですし、すべのことが思い通りになるものでもありません。予算のこともあるでしょうし、地域性とご自身の思いとがマッチしていないこともあるでしょう。設計者の思いや得意とすることがあなたの希望とあっていないこともあるでしょうし、あこがれていても手に入りにくい建材もあります。 また、多くの人間の手で順番に作られるものですから、間違いもあります。そういった諸々のことを含めて考えても、出来栄えが全体として満足なら、素直に喜べる人であって欲しいと思います。 施工関係者はみな、いい出来だと思っていても、施主検査になったとたんに、徹底的に「あらを探す」という態度の施主はとても多いのです。もちろん傷は直してもらったらいいのですが、庭は傷ひとつない工業製品だけで作るものではないですよね。 そしてもっとも大切なことは、庭は工事が竣工したときが完成ではないということ。 そこから施主自身がじっくり作っていくものだということ。 作ってというより、育ててと言う方がいいかもしれませんね。 あなたがバトンタッチを受けるのです。素直な喜びからスタートしたいですよね。庭とも、設計者や施工者(職人)との、長いお付き合いがこれから始まるのです。 どの状態からバトンタッチを受けるのか、つまりどこまで作ってもらうのか、ということは、あなた自身が決めることです。花壇は作ってもらう?もらわない? 木は植えてもらう?もらわない? 庭づくりをあなたがどう楽しみたいのか、を考えて決めたらいいのです。 |
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