message 「庭のあれこれ」編  … 縁(えん)
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


 以前、内と外をつなぐというテーマでお話しましたが、今回はその続き、「縁」「縁側」というテーマです。


* *


 今の日本家屋で失われてしまったスペース、和室(ちゃんとした日本間)、茶の間、土間、納屋、そして縁(えん)。

 間取りが畳の間だけで構成されていたときには、縁は、廊下の役割を果たしていました。縁を通って、庭を見ながら、部屋から部屋へ移動していたわけです。




「縁」の意味

 縁は、通路としての意味だけでなく、源博雅と阿倍晴明が縁に座って酒を飲みながら呪の話をしていたように、部屋の一部でもあったわけです。

 部屋の延長としての空間。部屋と庭を繋ぐ空間。

 部屋の中より、より外気に近く、風や気温や花の匂い、そして季節を感じる空間。


 機能的な意味でも、縁は部屋内と外との緩衝空間で、一種の断熱層、つまり、外の冷たい空気がいきなり部屋内の空気に触れて快適な気温を下げないようにするクッションであるわけです。

 あるいはぽかぽかとした陽気の日には、暖かい空気が満ちます。縁側といえば、日向ぼっこをイメージしますね。もちろん、夏の暑い日には、深い庇が、強い日差しや暑い空気が部屋内に、直接に入り込まないようにもします。濡れ縁の場合も、日差しは遮ることができます。



なぜなくなったのか

 ところが、今の住宅はなぜそんな価値のある「縁」が無くなってしまったのでしょうか。

 現在の小さな敷地に家を建てる場合、スペース的な効率を優先すると、通行のためのスペースは廊下として建物の中央を通り、その両側に部屋を配置するということになります。多くのマンションプランがそうであるように。

 各部屋は庭に面するけれども、廊下は暗くて閉塞感のある、通路として以外なんの意味もない空間になってしまったわけです。


 縁はなくなりました。

 和室に面した開放感のあるフレキシブル空間はなくなりました。

 わずか1mの幅の通路がもったいないからではなくて、和室がなくなって洋室になったからだという人もいるでしょう。

 それは違います。洋室であっても、縁に開放する部屋の作り方はできるわけです。



 それをいうなら、部屋のプラ−バシーを大事にするようになった、機密性が高いのが高性能だと考えるようになった、ということです。そして、引き戸が敬遠され、開き戸が重宝されるようになったということです。
 そうなると、もう、縁の出番はありません。部屋に閉じこもり、庭との緩やかな連続性なんて、何ら省みられなくなったわけです。


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 少し、堅苦しい話でしたね。

 でも、最近、進んだ人に引き戸は見直されてきているし、外部空間から閉ざされたハウジンブプランに疑問を持つ人もたくさん出てくるようになりました。

 息の詰まる、いきすぎたプライバシー確保と機密性ではなく、もっとおおらかな家族関係や自然環境との付き合い方に価値があると考える人達です。


 これから、家のプランを、と考えている人、縁の持つ意味について少し考えてみましょう。

 昔のとおり、縁側がぐるっと回った家ということではなくても、庭との関係性をどうしようかということでもいいですから。


 さて、ウッドデッキが現代の縁、という考え方もあるでしょうか。

 うーん、うーん。そうともいえるでしょうが、決定的な違いがありますね。ウッドデッキに裸足で出ますか。ほとんどの人は下足でしょう。あれはあくまで、庭の設え。縁はもちろん裸足です。つまり部屋の延長です。



 何ら深く考えもせずに、「ウッドデッキはリビングの延長」という人がいますが、よくよく考えると違和感のある台詞ですね。





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