実践編‐14 スタイル
一級建築士・インテリアデザイナー・ガーデンデザイナーの庭づくり講座/ガーデニングデザインメッセージ集


実践編 スタイル


 「 青春とは、心の様相をいうのだ 」

 十数年前に、大阪梅田のスカイビル(空中庭園のあるビル)のプロジェクトをしていたとき、メンバーの一人が誰かの小文を披露した。その冒頭の言葉だ。意味は、読んで字のごとくだから説明はしないが、あのときの僕らの気分に完全に一致した。十人足らずのメンバーのほとんどが三十代で、夢も力も自身も気力も人一倍あり、燃えていた。吼えていた。走っていた。

                ○

 さて、今回は久しぶりに少々理屈っぽい話。

 ジャパニーズスタイル
 アジアンスタイル
 モダンスタイル
 クラシックスタイル
 オーセンティックスタイル
 トラディショナルスタイル
 カントリースタイル
 癒しテイスト
 ナチュラルテイスト
 カジュアルテイスト
 ワイルドテイスト
 アドベンチャーテイスト  などなど

 庭や空間の雰囲気を表現するのにさまざまな言葉が乱れ飛んでいる。マンションのパンフレットなんかを見ると、ラグジュアリーエレガントとかオーセンティックシックとか、なにそれ?というイメージワードが客の心をくすぐろうとしている。
 言葉は大切だ。形のあるものは絵や写真で示すことはできても、心や考えは基本的に言葉で表現する。だから、ナチュラルモダンと言ってみても、それがどんなものなのかが誰でも普遍的にイメージできないと意味はない。

 で、先に挙げた「何とかスタイル」と「何とかテイスト」というやつ。

 自分の庭をそういう言葉で表現するとどうなるかな。そういう言葉は、まあ、そりゃ、いろいろあるよ。ファッション雑誌やショップデザインの雑誌、建築雑誌や、住宅の広告を見れば。それらの言葉の使い方を見るだけで、その文章を書いた人とチェックした人と責任者の、真剣さ具合がわかる。つまり、テキトーな耳あたりのいい言葉でなんとなく読む人をだまくらかそうとしているのか、きちんと言葉を選んで、正確に思いを伝えようとしているのか、ということが。

 スタイル   工業製品の型。デザイン。文芸美術音楽、建築などの表現様式。時代,流行、作家、作品に特有の形式や手法
 テイスト   味、味わい、趣味、好み
                   (三省堂 現代カタカナ語辞典より)


 また、「何とかスピリット」とか、「何とかセンス」とかいう言葉もある。いずれにしろ前の言葉と後ろの言葉が繋がっているという当たり前のことができてないと、その人がまじめに考えたとは思えないわけだ。(まさか、受けねらいでわざとひねっているなんてレベルの低いことしてないよね)

 たとえば、アジアンスタイル、アジアンテイストとあれば、アジアンスタイルはイメージできるけど、アジアンテイストはイメージできないわけだ。(アジアってどこのことなんて、野暮なことは聞かない。西洋から見た東洋は広いし、日本人から見たアジアというと狭い。西洋から見ると日本も含めインドやインドネシアも入るだろうけど、日本でアジアンテイストと言ったときには、東南アジアかな?)

 「スタイル」は目に見える「形」で普遍的に思い浮かべることができるもの。何々風とも言える。
 ちなみに、私の本の始めに、「あなたの庭は○○スタイル(○○にはあなたの名前)なのです」と書いた。これは、どこかの庭の真似をしようとしても、自然とあなたの作品としての形が表現されますよということを言いたかったわけだ。それを意識して庭づくりをして自分流の庭づくりを楽しもうと言いたかったわけだ。

 「テイスト」「センス」「スピリット」は「心の様相」「生き方」「過ごし方」。あるいはニュアンス。


 言いたいことは、目に見える形と心の様相をきちんと区別したいということ。ややこしい? じゃ、こういう言い方はどうかな?
 「スパニッシュスタイルにジャパニーズテイストを加味して」
 これならわかる。空間のデザインはスペイン風で、和の心を少しだけ加えている。
 「ヨーロッパの伝統的スタイルを禅スピリットで」
 どんなものか目には浮かばないけど、言いたいことはわかる。

 とはいえ、どんな言葉に付け加えてもなんとなく感じのわかる言葉もある。
「ナチュラル」とか「ワイルド」など
 ナチュラルスタイルでもナチュラルテイストでもナチュラルスピリットでも使える。それぞれ意味は違うけど。


 つまり、形を表現したいのか、心の様相を表したいのか、をはっきりさせた上で言葉を選ばないといけないということ。形を表すのは簡単で、心を表現するのは難しい。スペイン風といえばなんとなく誰もがイメージするものがあるけど、日の光や吹き抜ける風や虫の声を楽しむ心の持ちようを表現するのはむつかしいということ。

 広告を見たり打ち合わせのときに、何とかスタイルとかテイストは何々とか、○○スピリットとかいう言葉に出会ったときには、相手が懸命に言葉を選んで何とか自分の思いを表現しようとしているのか、安易な言葉遊びとして耳に心地よい言葉を羅列しているだけなのかを、慎重に嗅ぎ取りたい。


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